事例紹介インタビュー「徳島の気候変動に伴う降雨パターンの変化とダムの関係」

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令和3年2月12日、徳島県気候変動適応推進員、また、徳島県学生地球温暖化防止活動推進員として活躍している元渕あかねさん、元渕ほのかさんが、国土交通省 四国地方整備局 那賀川河川事務所を訪問し、徳井課長、濱田係長、朝山係長、谷本係員から、徳島の気候変動とダムについてお話しを伺いました。

近年の気象の変化と自然災害について

元渕あ:近年、雨量の増加による災害が多くなってきていますが、原因としては地球温暖化が関連していると思われますか。

朝山:必ずしも地球温暖化が関係しているとは言い切れませんが、全国各地で甚大な水害が頻発しています。最近は雨の降り方が変わってきて、短い間に大量の雨が降る、いわゆる「線状降水帯」という現象も起こっていて、毎年日本のどこかで起こっています。これは特定の地方だけの問題ではなく、どこで起こってもおかしくありません。そして、少なからず温暖化が原因の一つではないかと考えられます。那賀川流域では戦後で一番多く雨が降ったのが平成26年です。1階部分が浸水しても問題のないピロティ構造になっている加茂谷中学校(阿南市加茂町)も2階まで浸水したんですよね。

H26年台風16号 出水パンフレット(抜粋).pdf (PDF 579KB)

元渕あ:やはり水害による被害は夏の時期に多く起こるのでしょうか。

朝山:はい、夏は台風も起こりやすく、さらに、台風だけでなく梅雨前線によってもたらされる降水量も多くなっています。しかし、自然災害は冬にも起こり得ます。それが雪害です。徳島でも、平成26年に三好市山間部の広範囲で雪害が発生し、陸上自衛隊による救助活動が行われました。
●平成26年12月 徳島県~愛媛県間の国道192号での雪害
http://www.skr.mlit.go.jp/bosai/sikoku/sokuhou/honbu/h26/i761/141206-999.pdf

元渕あ:ありがとうございます。自然災害による脅威は一年中油断してはならないのですね。雪による被害は私たちには関係のないことだと思っていましたが、こんな身近にも起こり得るのですね。

元渕ほ:雨量に関することでお聞きしたいのですが、増加による問題はよく耳にしますが、逆に、降水量の少ない地域もあるのですか。

朝山:全国的にみて、大雨は増えてはいますが、降らない地域には本当に降らないので、今でも渇水は発生しています。

元渕ほ:実際に渇水が起こったら私たちはどうすればいいのですか。

徳井:節水ですね。しかし、真っ先に給水を制限するのは工場や農業用水などで、私たちが日常生活で使用する水は上水道から供給されているのですが、上水道へ制限をかけるのは、本当に水が枯渇したときの最終手段です。

元渕ほ:それを聞いて安心しました。

ダム管理と洪水対策

元渕あ:那賀川河川事務所さんでは長安口ダムの管理もしていらっしゃるとのことですが、例えば、洪水対策として行っていることはありますか。

濱田:はい。大きく分けて二つあります。一つ目がダムの改造事業です。お配りした資料に掲載していますが、ゲートを二つ追加したんですね。「洪水吐ゲート」といって、令和元年に追加されました。二つ目は、これまで洪水調整容量のなかった川口ダム、小見野々ダム、大美谷ダムの三つのダムに、一時的に流れを調整するために確保してもらいました。これがいわゆる治水協定ですね。

朝山:ここで補足なのですが、今まで、その三つのダムになぜ洪水調整容量がなかったか、と疑問に思うかもしれないですね。例えば、小見野々ダムの場合、四国電力が発電の目的で資金を出して建てたダムなので、そこに水をためさせてもらうことは難しかったのですが、令和元年度に起こった台風19号による災害がきっかけで、令和2年度に結ばれたのが治水協定です。

元渕あ:より詳しく説明していただきありがとうございました。

平時の長安口ダムの様子                          洪水時の長安口ダムの様子
4長安口ダム 平時の写真.jpg5長安口ダム洪水時の動画キャプチャ(R1年8月15日 台風10号).jpg

那賀川の生態系

元渕ほ:那賀川にも様々な生き物がいると思いますが、気候変動に伴って生態系は大きく変化しましたか?

朝山:今のところ外来種などが増えているわけではないのですが、既に生息していることは確認されています。オオクチバスとかね。

元渕あ:珍しい生き物も生息しているのですか。

朝山:いますよ。シオマネキやオヤニラミ、カジカ小卵型とか。こういった生物を発見しても詳細な場所は公表しません。採りにこられたら困りますからね。もちろん、専門家の方々には場所も報告します。

出前講座について

元渕ほ:那賀川河川事務所さんでは、水防災意識社会の構築のためにどのようなことを行っていますか。

朝山:出前講座などですね。依頼を受け、地元の自主防災組織や小学校などで、いろんな世代を対象に出前講座を行っています。防災についての講座内容は、避難情報の発信が中心になっています。

「逃げ遅れゼロ」のために取り組んで欲しいこと

元渕ほ:わかりました。最後に、昨今の災害の増加に伴い、この機会にぜひ発信してほしいことはありますか。

朝山:やっぱり一番は「逃げ遅れゼロ」を達成するために、住民の皆様にもご協力していただきたいということですね。それに関する取り組みとして、先ほどお伝えした出前講座などをはじめ、水害対応タイムラインの作成や、ホームページでの情報発信をしています。皆さんにはぜひ自治体の避難訓練に参加するなどして水防災への意識を高めてほしいです。

6逃げ遅れゼロについて.jpg

元渕あ:このインタビューを通じて、水害の怖さを改めて痛感し、私たちも防災への意識をより一層高めていきたいと感じました。本日は貴重なお時間をいただきありがとうございました。

資料・画像データ出典:四国地方整備局

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