事例紹介インタビュー 気候変動の昆虫への影響について

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春を思わせる陽気となった、2023年3月8日。「徳島県気候変動適応推進員」でまた、「徳島県学生地球温暖化防止活動推進員」として活動をされている加林龍治さんと、徳島県気候変動適応センター職員の布川洋之が、佐那河内村にある「佐那河内いきものふれあいの里ネイチャーセンター」を訪ね、気候変動の昆虫への影響について、大原賢二さん(佐那河内いきものふれあいの里ネイチャーセンター センター長)からお話を伺いました。

気候変動の昆虫への影響について

地球温暖化にともなう、気温上昇等の気候変動により、昆虫はどのような影響を受けているのでしょうか。

大原さん:様々な影響を受けています。特に心配なのは、寒い場所にいる種類が、地球温暖化により気温が上がることによっていなくなることです。例えば、四国では剣山系と石鎚山系の、標高があって、低地よりは寒い場所(山地)に生息する、ツマジロウラジャノメというチョウは、以前は、剣山系でも見られていましたが、ここ、10年ほどは確認されていません。このチョウが食草とする植物はまだ残っていることもあり、具体的な理由は不明ですが、気温の上昇は要因の一つとして考えられます。

その他には、どのような影響があるのでしょうか。

大原さん:その他には、もともと温かい場所にいた種類が、地球温暖化にともなう気温の上昇により、どんどん、北上してきているということがあります。有名なのは、ナガサキアゲハというチョウです。このチョウは、もともとは、九州や四国の南部にたチョウですが、地球温暖化にともなう気温の上昇により、どんどん、生息できるエリアが北上し、現在では、関東地方まで見られるようになっています。ナガサキアゲハは、年平均気温が約15℃を超えると生息できるようになるようで、そのラインが北上することに合わせて、分布を北上させているということが言われています。

ナガサキアゲハ_写真AC(トリミング).jpg↑ナガサキアゲハ

大原さん:その他に、クマゼミというセミは、以前は、徳島では内陸部にはあまりいませんでしたが、今は、夏になれば、まちなかでは、クマゼミの「シャアシャアシャア」という鳴き声ばかりをよく聞くようになりました。まちなかでは、ヒートアイランドの影響により、より高温になりやすく、また、高温により地面が乾燥しやすくなります。セミは樹皮の中など樹木の地上部に産卵し、孵化した幼虫は地面を掘って、その後、地中で木の根の汁を吸って成長します。クマゼミの幼虫は、アブラゼミなどの他のセミに比べ、地面を掘り進める力が強く、他のセミでは、なかなか堀り進めることが難しい、ヒートアイランド等の影響により乾燥した地面でも、堀り進めることができることから、今、まちなかではクマゼミが多く見られるようになっています。

クマゼミ_20220719_自宅.JPG↑クマゼミ

大原さん:また、トンボでは、ベニトンボというトンボが急速に分布を拡大させています。かつては、日本では鹿児島県の薩摩半島の一部だけに生息するトンボでしたが、地球温暖化による気温の上昇にともない、より南方の個体群がどんどん北上し、現在では、近畿あたりまで分布が拡大しています。徳島県では、2007年に初めて確認され、現在では、県内でも広く確認されています。

♂縄張り20170604徳島県海難町.jpg↑ベニトンボ

どのような影響につながる恐れがあるのか

こうした、気候変動による昆虫の分布の変化などは、どのような影響につながる恐れがあるのでしょうか。

大原さん:生き物は複雑にバランスをとりながら生きています。南方系の昆虫の分布が拡がることで、もともと地域にいた昆虫がいなくなるということにつながる可能性があり、その昆虫を糧にしていた別の生き物もいなくなるという、連鎖的な影響につながる恐れもあります。昆虫は、生態ピラミッドの下にいる生き物で、その上にいる、様々な生き物の命を支えていますので、連鎖的に様々な影響につながる恐れがあります。しかし、具体的にどのような影響につながるのか、予測するのはとても難しいです。また、害虫となる昆虫が増えることで、私たちの暮らしにも影響を及ぼします。例えば、徳島県でも近年、ニガウリを食害とするアシビロヘリカメムシや、サツマイモの葉を食害するヨツモンカメノコハムシ等の害虫が確認されるようになっており、農産物への影響が懸念されています。

P3080011.JPG

私たちはどのようなことに気をつければよいのか

そうした、影響に備えるために、私たちはどのようなことに気をつければよいでしょうか。

大原さん:どのような影響につながるか分かりませんので、何か影響が出た場合に原因を探りやすくなるよう、気候変動の影響により分布が変わってきている昆虫の情報を集めておくことが重要です。今、そうした情報の多くは、アマチュアの方からの情報で大変、貴重な情報です。今後、より多くの人がそうしたことに関心を持ち、情報を集めていくことが大切です。

今、環境省と(株)バイオームという企業が連携して、気候変動で見られる場所や時期が変わった昆虫などの生き物を見つけて、スマホで写真を撮って投稿する、「気候変動いきもの大調査」ということを、アプリ「バイオーム」で展開しています。こうしたツールは有効ですね。

大原さん:そうしたツールがあるのであれば、よいですね。多くの人が関心をもつと思います。

本日は大変興味深いお話をありがとうございました。

※環境省と(株)バイオームが連携して実施している、「気候変動いきもの大調査」は、以下のウェブページからダウンロードできます。是非、ご参加ください。

https://ccbio.jp/

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