事例紹介インタビュー 先人の知恵や伝承に学ぶ

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徳島県気候変動適応センター職員の布川洋之が、徳島大学環境防災研究センターの上月康則センター長に、四国や徳島県の災害の特徴、そうした災害に対する先人の様々な知恵や伝承ついてお話を伺いました。

四国や徳島県の災害の特徴について

四国や徳島県では、災害にどのような特徴があるのでしょうか。

上月先生:他県からすれば、四国はひとつと見られることが多いですが、気候・地形的な特徴から、起こっている災害の種類が異なります。四国の太平洋側では、南海トラフ地震による津波、瀬戸内海側では少雨による渇水といった災害が多いという特徴があります。そして、徳島県では、水害の面から大きな特徴があります。天気は西から東に変わります。また、台風も西から東にやってきます。徳島県を流れる吉野川や那賀川は、西から東へ流れています。実は西から東へ流れている川というのは、全国的にみても珍しいのです。西から東へ流れるということは、西から東へ降る雨を集めながら流れてくるので洪水になりやすいのです。特に吉野川は、流域面積も非常に広いことから、「日本の三大暴れ川」の一つに数えられる所以となっています。

徳島県を流れる吉野川、那賀川が、地形的な特徴から洪水が起こりやすいということは知りませんでした。

上月先生:徳島県は、沖積平野が広いです。また、県庁は沖積平野にあります。県庁がある場所は、洪水のほかに高潮や津波の被害も受けやすい場所です。このことは、先人の人達がある程度、水に浸かることを許容して生活をしていたということです。そして、こうした水害に対して、先人の人達が苦労して治水に取り組まれてきたことから今の私たちの暮らしがあるのです。しかし、今、地球温暖化にともなう気候変動により、各地で豪雨災害が頻発化してきている中、徳島でも、いつ、大きな水害が起きてもおかしくありません。こうした中、水害についての先人の様々な知恵や伝承は、今の私たちにとっても学べることが多くあるのです。

先人の様々な知恵や伝承について

どのような、先人の知恵や伝承があるのでしょうか。

上月先生:例えば、吉野川の下流域には、台座の高い「高地蔵」というものが200体近くあります。この高地蔵は、「洪水でお地蔵さんが水に浸かったりしては申し訳ない」という、先人の信仰心から、台座が高くなったと言われています。つまり、地蔵の台座が高いほど、その地区の水害が大きかったことを示しています。また、四国八十八箇所の札所は多くは浸水しないよう、沖積平野の縁辺の台地に造られていますし、低地にある十七番札所の井戸寺は、浸水しないよう高く造られています。

先人のお地蔵さんやお寺を大切にしようという気持ちが伝わってきますね。そして、こうした高地蔵や札所は、今の私たちに、水害が起きたときにどれくらい危険なのかを教えてくれているのですね。

高地蔵(高さ表示あり).jpg↑吉野川の下流域にある「高地蔵」。写真は最も台座の高い高地蔵で「東黒田のうつむき地蔵」と呼ばれている。台座は3m近くある

井戸寺.JPG↑十七番札所の「井戸寺」。低地にあることから、本堂等は高く造られている。 

上月先生:そうですね。ほかにも、吉野川の中流には、水防竹林というものが多く残っています。これは、財政的な理由などから堤防を築堤することができなかったことから竹林を植えて、洪水時の水の勢いを竹林によって防いでいました。また、こうした竹林を原料にして和傘や釣り竿をつくる産業が生まれました。なお、吉野川中流に残されている水防竹林の規模は日本一だと言われています。また、那賀川の流域では、畳を堤防かわりに設置したという伝承が残っていたりします。こうした災害に関する、先人の様々な知恵で伝承について、四国各地に残されたものを「四国防災八十八話マップ」という教材で、徳島大学環境防災研究センターが発行していますので、地域の防災教育の教材として、是非、ご活用していただければと思います。

ありがとうございます。イラストがかわいくて、親しみやすい教材ですね。是非、活用させていただきます。

※インタビューの中で上月先生からご紹介のあった、「四国防災八十八話マップ」は、以下の「四国防災八十八話倶楽部」のウェブサイトから閲覧・ダウンロードできますので、地域の防災教育の教材として、是非、ご活用ください。

https://shikokubousai88wa-t.amebaownd.com/

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