事例紹介インタビュー 「気候変動の県内農業への影響」

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2020年11月、徳島県学生地球温暖化防止活動推進員の沖吉諒さんが、小松島市内で農業を営む栗本さんと多田さんご夫婦に、農業への気候変動の影響について、お話しを伺いました。また、当日は、徳島県地球温暖化防止活動推進センター等が主催、徳島県学生地球温暖化防止活動推進員が制作する、参加型啓発動画「アースバトン~活動の輪を徳島から世界へ~」(2020年12月YouTubeで発信)に、メッセージを寄せていただきました。

栗本さん:「水路の維持管理をし水田を守り夏場の温度の上昇を抑える」

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多田さんご夫婦:「お米をつくっていることは地球のため(脱炭素)になっているんだ!!と意識して働きます!」

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農業への気候変動の影響

沖吉:農業生産は気候変動の影響を受けやすく、各品目で生育障害や品質低下など多くの問題が起きていると聞いたことがあります。実際、どのような問題が起きているのでしょうか?

栗本:まず、お米に関してですが「高温障害」です。お米というのは、基本的に透き通っていないといけないのですが、高温障害の影響で一部が白濁して、お米の中のデンプンが固まってしまいます。そうすると白く濁ったお米ができます。高温障害は、だいたい気温が25度以上の日が続くと発生すると言われ、最近では多々見られるようになっています。

徳島県農林水産総合技術センターで撮影したキヌヒカリ玄米(2020年9月)↓

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次に、ミカンです。この付近のミカンの生産農家さんが、今年の夏の暑さでミカンが「日焼け」をし、腐敗した状態で落下してしまう状態が多発しているとおっしゃっていました。

みかん日焼け.jpg出典:長崎県農林技術開発センター資料

もう一点は、私が主にしているシンビジウムなのですが今年の夏の暑さで出た花芽が煮えてしまうということが起こりました。今年の夏は、特に高温に悩まされました。

多田(妻):猛暑がすごく続いて、台風のこともいつも気になっていました。去年(2019年)は、すごく強い雨と風の影響で稲が倒れ、稲刈りの機械が使えなかったので、一部手作業で行わなければなりませんでした。今年は、たまたま徳島県への上陸がなかったため、安堵しました。

↓台風による稲の倒伏(イメージ写真)

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多田(夫):あとは、今年の天候の変動ですね。6月・7月は雨が非常に多く、米の生育に非常に悪い影響がありました。また、8月に入り、今度は逆に雨が降らない日が続きました。今年は平年並みとは言ってはいますが、日照過多・日照不足が影響しました。<参照:徳島地方気象台公表資料>

2020年6月徳島県気象概況_page-0001.jpg2020年7月徳島県気象概況_page-0001.jpg

   2020年8月徳島県気象概況_page-0001.jpg

沖吉:先ほどのお話で、お米が高温障害で一部白濁して白く濁ってしまうとあったのですが、実際にそうなることで農家はどのような影響を受けてしまうのでしょうか?

栗本:うるち米は透明が普通なのですが、高温障害で白く濁ってしまうと、出荷したときに2等米、3等米となり品質が落ちて、高い以下各価格で引き取ってくれません。最近では、高温障害の影響で主産地が東北のほうに移りつつあり、東北や北海道で品質のいいお米が収穫できることで、産地間競争が激しくなっています。

沖吉:地球温暖化や気候変動の影響で、現在と昔の農作物で違いが出ていると思います。現在と昔の農作物を比べて、どのような変化や違いがあると思いますか?

栗本:私たちは、お米以外の作物を大規模で栽培していないのでそのあたりの比較はあまり分からないです。ただ、家庭菜園的には、昔は植えて肥料さえ与えていれば、自然に収穫できていました。しかし、今では収穫しにくくなってしまいました。

沖吉:今、農業をするうえで一番困る天候はなんですか?

栗本:台風ですね。それ以外ないですね。温暖化で、次々に台風が上陸すると、ものすごく勢力の強い台風が来る可能性が十分にあります。最近では、台風シーズンも早まっておりお米の収穫時期と被ってしまうこともあるので、とても心配しています。

多田(夫):台風は、いつ来るかわからないので共生することができませんからね。

気候変動への適応

沖吉:農作物は気候変動の影響をすごく受けやすいと思うのですが、農作物を気候変動から守るために行っている取り組みや対策は何かあります?

栗本:通常、お米は自然任せでやりますのでなんの対策もできません。仮に、高温障害を出さないようにしようとするならば、用水路からの水を田んぼに流し続ける必要があります。しかし、それを行えば周りの方たちに迷惑をかけることになってしまいます。

どちらかと言えば、このあたりの地域はまだ気候条件が良い方だと思います。ひどいところでは、この程度では収まりきらないと思います。ですから自然は、農業をしている人だけではなく、生きている人にとっても大事なものだと思います。

沖吉:最後に、この先、農業をするうえで大切なことは何でしょうか?

栗本:これからの健康をいかに守っていけるかですね。農業をする人は、高齢者の方が多いですから、水田を持続させるためにも、健康でいなければいけませんからね。

多田(夫):健康でいることが大切だと思います。

多田(妻):これをきっかけに多くの人に農業について、少しでも知ってもらいたいですね。

沖吉:今回のインタビューで、農業は気候変動の影響を強く受けることがよく分かりました。気候危機と言われ、県内での熱中症の発生も増加し、農作業の環境も悪化する中で、お米を作ってくださっていることを忘れず、さらに感謝を込めて、食事前と食後のあいさつをしようと思います。今日はありがとうございました。

 

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